友と袋田の滝へ座敷童子と同行
友人と袋田の滝へ座敷童子と同行 16・4・22
わが部屋に座敷童子と同棲をはじめてから一カ月余、岡山の旧友の誘いに乗って茨城県の「袋田の滝」へ一泊の旅に出かけた。この一カ月間、座敷童子のお陰か、物忘れはしばしばだが、紛失するということが激減した。おまけに無くなった小銭入れ二つとかスプーンなどがベッドの下や机の脚の脇から出てきた。おまけに外出するときは、童子が一匹肩の上に乗っかってくる。交差点を渡るときなど、いつもは赤信号でも車が来ないとさっさと渡るのだが、いまは童子が「爺さん、待てしばし年寄りが急いでどうする」と止めてくれる。
友人などにそういうと「バカじゃないか。そんなこと…」と笑う。ときには「私そういうことを信じるわ」という人も稀にいるが、ほとんどの人は信じない。ところが四国歩き遍路のときも、同じ感覚を何度も味わった徘徊老人は、周辺に亡くなった友人たちや、若くして自殺した友人の女性などが行く先々で笑顔で迎えてくれることが多々あった。ときには、東京までついてきて、道案内をするみたい目の前にニコニコしていることがある。「もう東京だからいいよ」というと消えて出て来なくなる。だから座敷童子もそれと似た感覚でそばにいるものだと信じてしまう。
岡山の友人は三月で八十五歳になる。奥さんを失くして十九年。一人で暮らしている、腎臓、肝臓など内臓の病をもち、目も白内障手術をしたがよくない。耳も片方は聞こえない。こちらも耳は遠くなっているし、目も悪くなっている。お互いに大声で話しても聞こえない場合もある。相互に勝手なことを言い合って会話にならないことが多い。そうするとお互いに不愉快になって黙ってしまう。それでも数十年の付き合いだから暗黙の理解で通じ合うものがある。
袋田の温泉宿に泊まったが、食事は近くのヒロシマ焼きの店で食べた。そして宿に帰った直後、ポケットにあるはずの携帯電話がない。困った。どこで落としたのか。友人の携帯電話を借りて食事をした店にかけて見た。食卓に忘れてゐたら電話の音で気づくだろう。しかしウンともスンともいわない。やむを得ず店まで歩いて行ったが、携帯電話は忘れてゐなかった。宿のフロントや新聞を読んだ部屋で携帯を鳴らすが音が聞こえない。遂に童子の運も尽きたのかと思ったところ、座敷童子の声が聞こえた。「爺さん、部屋の中に入って見て」。即座に鍵を開けて入ると、ベッドの白いシーツの上に鎮座ましました。
袋田の滝も宿の露天風呂は最高だった。春の雨の後の袋田の滝も川も滔々たる流れで、それを見ながら入る露天風呂。川面を流れる風を満喫しながらごきげんだった。翌日、袋田駅から水戸駅まで出て軽食を食べて東京行きの特急に乗った。車掌が来てから復路用に買った特急券がなくなっていることに気付いた。あわてたが止むを得ない。特急券を新たに買って東京駅に着いた。そして地下鉄に乗ってもう一度リュックの中を捜した。なんとリュックの底に特急券は落ちていた。手数料は取られたが飯田橋駅で返金してもらった。何度かの危機はあったが、今回の旅は紛失物忘れ物ゼロの旅だった。座敷童子さまさまである。
新緑や雀群れ飛ぶ露天風呂 漫歩
袋田の滝滔滔と春の水
わが部屋に座敷童子と同棲をはじめてから一カ月余、岡山の旧友の誘いに乗って茨城県の「袋田の滝」へ一泊の旅に出かけた。この一カ月間、座敷童子のお陰か、物忘れはしばしばだが、紛失するということが激減した。おまけに無くなった小銭入れ二つとかスプーンなどがベッドの下や机の脚の脇から出てきた。おまけに外出するときは、童子が一匹肩の上に乗っかってくる。交差点を渡るときなど、いつもは赤信号でも車が来ないとさっさと渡るのだが、いまは童子が「爺さん、待てしばし年寄りが急いでどうする」と止めてくれる。
友人などにそういうと「バカじゃないか。そんなこと…」と笑う。ときには「私そういうことを信じるわ」という人も稀にいるが、ほとんどの人は信じない。ところが四国歩き遍路のときも、同じ感覚を何度も味わった徘徊老人は、周辺に亡くなった友人たちや、若くして自殺した友人の女性などが行く先々で笑顔で迎えてくれることが多々あった。ときには、東京までついてきて、道案内をするみたい目の前にニコニコしていることがある。「もう東京だからいいよ」というと消えて出て来なくなる。だから座敷童子もそれと似た感覚でそばにいるものだと信じてしまう。
岡山の友人は三月で八十五歳になる。奥さんを失くして十九年。一人で暮らしている、腎臓、肝臓など内臓の病をもち、目も白内障手術をしたがよくない。耳も片方は聞こえない。こちらも耳は遠くなっているし、目も悪くなっている。お互いに大声で話しても聞こえない場合もある。相互に勝手なことを言い合って会話にならないことが多い。そうするとお互いに不愉快になって黙ってしまう。それでも数十年の付き合いだから暗黙の理解で通じ合うものがある。
袋田の温泉宿に泊まったが、食事は近くのヒロシマ焼きの店で食べた。そして宿に帰った直後、ポケットにあるはずの携帯電話がない。困った。どこで落としたのか。友人の携帯電話を借りて食事をした店にかけて見た。食卓に忘れてゐたら電話の音で気づくだろう。しかしウンともスンともいわない。やむを得ず店まで歩いて行ったが、携帯電話は忘れてゐなかった。宿のフロントや新聞を読んだ部屋で携帯を鳴らすが音が聞こえない。遂に童子の運も尽きたのかと思ったところ、座敷童子の声が聞こえた。「爺さん、部屋の中に入って見て」。即座に鍵を開けて入ると、ベッドの白いシーツの上に鎮座ましました。
袋田の滝も宿の露天風呂は最高だった。春の雨の後の袋田の滝も川も滔々たる流れで、それを見ながら入る露天風呂。川面を流れる風を満喫しながらごきげんだった。翌日、袋田駅から水戸駅まで出て軽食を食べて東京行きの特急に乗った。車掌が来てから復路用に買った特急券がなくなっていることに気付いた。あわてたが止むを得ない。特急券を新たに買って東京駅に着いた。そして地下鉄に乗ってもう一度リュックの中を捜した。なんとリュックの底に特急券は落ちていた。手数料は取られたが飯田橋駅で返金してもらった。何度かの危機はあったが、今回の旅は紛失物忘れ物ゼロの旅だった。座敷童子さまさまである。
新緑や雀群れ飛ぶ露天風呂 漫歩
袋田の滝滔滔と春の水
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