95歳の料理家、辰巳芳子の警告「日本はすごく貧しい」
95歳の料理家、辰巳芳子の警告「一番汚した原子力」 20・11・5
料理家の辰巳芳子さん(95)は、日本の食文化を豊かにするために提言を続けてきた。戦前から「日本の食料がいかに弱いかというのをずっと体験してきた。骨身にしみて知っているんだ」という辰巳さんが、現代の食の危うさを語った。
――戦争のあとから比べると、食卓は豊かになりました。私たちは今、何を食べたらいいでしょうか。
◆地球の在り方とあわせて食べていく 一番汚したのは原子力
そうね、自分も食べ物も、自然の一環であるというのを忘れてはいけない。自然とかけ離れて食べれば、体の養いにはならないのよ。自然の中にいて、季節ごとにできるものをみれば、何を食べればいいかは、自然に分かってしまう。それを食べるよりほかないんだから。そして、地球の在り方とあわせて食べていくこと。地球を宇宙の中にすえて考えていかないと、私たちは食べ損なっちゃうと思う。
――宇宙との関係というのは、具体的にはどういうことですか。
太陽とか水、空気とか。そういうね、とっても原点的なことを謙虚に考えて生きなければならないと思うんだ。それを汚さないように。一番汚して、取り返しがつかないのは原子力だろうね。そういうもので根本的なところをいじめないようにしないといけないと思います。
◆この国は本当に持たざる国 大豆百粒運動を
-辰巳さんは社会意識がとても高い料理家だと感じます。
私は社会意識が強くて、並の強さじゃないと思う。それは多くの若者が国のために死んだからです。あの若者たちの死を無駄なものにしたくないんだ。それが私の意識の中にはっきりある。75歳の頃にフィリピンまでいきました。どんなところで日本の若者が戦ったのか、見てこようと思って行ったんです。小さな南太平洋の島だったけれど、日本の兵隊は草の葉っぱの露をなめながら戦っていた。見たらテニスコートがある。あそこでテニスをやったんですかってきいたら、そこの下は米軍の兵隊が使うプールだったそうです。
米軍の兵隊はプールに水をもっていた。日本の兵隊は水がなくて草の裏の露をなめていた。その差をもって、日本の兵隊が戦っていた。だから私は、自給率を高めるために、大豆を育てる「大豆100粒運動を支える会」を起こしました。コメはどうかこうか、国が維持していくでしょう。でもこの国の政府は、大豆まではできない。この国はたんぱく質が皆無だよ。魚も昔の何分の一かしかとれない。家畜はっていうと、もっと持ってない。豆よりほかしょうがないんだ。豆がなければ、私たちの子孫は生きていられませんよ。せめて、大豆ぐらい持ってないと、どうしようもないんだ。あれは最低の線なんだ。この国はものすごく貧しいよ。とっても貧しいんだよ。
◆食料自給率は4割以下 飼料は殆ど輸入に頼っている
――今の日本では、貧しいというのはなかなか実感できません。
食料自給率は40%を割っているし、国産大豆は7%しかない。和牛といっても、エサも輸入に頼っています。私はね、昭和16(1941)年ぐらいから、日本の食料がいかに弱いかというのをずっと体験してきた。いかに危ない国かっていうのを骨身にしみて知っているんだ。この国は本当に持たざる国ですよ。何か起きれば、すぐ手のひらを返したように食べられなくなります。
◆若い世代への警告、
――若い世代は自給率の低さは頭で分かっても、実際に感じることは難しいと思います。関心を持つきっかけはありますか。いまの日本を、次の時代に渡していくことは、本当はしてはいけないと思う。こういう日本をもらっても困るだけです。何か言ってあげられることといったら……。
まずね、炊飯器を使わないでご飯をたける人になってごらんなさい。それからね、煮干しでダシをひいてごらん。それがどこまでやれるか、自分を試してみることだ。そして煮干しをから煎りしてかじるんだ。煮干しをかじれる人になれるかどうか。そう思わない?
とっても皮肉な提案だと思うけれど、自分を試してご覧なさい。私たちの持っているものは、煮干し以外ないんです。その煮干しを扱えなかったら、命は危ないな。朝日新聞デジタル>記事 (実業之日本社)
料理家の辰巳芳子さん(95)は、日本の食文化を豊かにするために提言を続けてきた。戦前から「日本の食料がいかに弱いかというのをずっと体験してきた。骨身にしみて知っているんだ」という辰巳さんが、現代の食の危うさを語った。
――戦争のあとから比べると、食卓は豊かになりました。私たちは今、何を食べたらいいでしょうか。
◆地球の在り方とあわせて食べていく 一番汚したのは原子力
そうね、自分も食べ物も、自然の一環であるというのを忘れてはいけない。自然とかけ離れて食べれば、体の養いにはならないのよ。自然の中にいて、季節ごとにできるものをみれば、何を食べればいいかは、自然に分かってしまう。それを食べるよりほかないんだから。そして、地球の在り方とあわせて食べていくこと。地球を宇宙の中にすえて考えていかないと、私たちは食べ損なっちゃうと思う。
――宇宙との関係というのは、具体的にはどういうことですか。
太陽とか水、空気とか。そういうね、とっても原点的なことを謙虚に考えて生きなければならないと思うんだ。それを汚さないように。一番汚して、取り返しがつかないのは原子力だろうね。そういうもので根本的なところをいじめないようにしないといけないと思います。
◆この国は本当に持たざる国 大豆百粒運動を
-辰巳さんは社会意識がとても高い料理家だと感じます。
私は社会意識が強くて、並の強さじゃないと思う。それは多くの若者が国のために死んだからです。あの若者たちの死を無駄なものにしたくないんだ。それが私の意識の中にはっきりある。75歳の頃にフィリピンまでいきました。どんなところで日本の若者が戦ったのか、見てこようと思って行ったんです。小さな南太平洋の島だったけれど、日本の兵隊は草の葉っぱの露をなめながら戦っていた。見たらテニスコートがある。あそこでテニスをやったんですかってきいたら、そこの下は米軍の兵隊が使うプールだったそうです。
米軍の兵隊はプールに水をもっていた。日本の兵隊は水がなくて草の裏の露をなめていた。その差をもって、日本の兵隊が戦っていた。だから私は、自給率を高めるために、大豆を育てる「大豆100粒運動を支える会」を起こしました。コメはどうかこうか、国が維持していくでしょう。でもこの国の政府は、大豆まではできない。この国はたんぱく質が皆無だよ。魚も昔の何分の一かしかとれない。家畜はっていうと、もっと持ってない。豆よりほかしょうがないんだ。豆がなければ、私たちの子孫は生きていられませんよ。せめて、大豆ぐらい持ってないと、どうしようもないんだ。あれは最低の線なんだ。この国はものすごく貧しいよ。とっても貧しいんだよ。
◆食料自給率は4割以下 飼料は殆ど輸入に頼っている
――今の日本では、貧しいというのはなかなか実感できません。
食料自給率は40%を割っているし、国産大豆は7%しかない。和牛といっても、エサも輸入に頼っています。私はね、昭和16(1941)年ぐらいから、日本の食料がいかに弱いかというのをずっと体験してきた。いかに危ない国かっていうのを骨身にしみて知っているんだ。この国は本当に持たざる国ですよ。何か起きれば、すぐ手のひらを返したように食べられなくなります。
◆若い世代への警告、
――若い世代は自給率の低さは頭で分かっても、実際に感じることは難しいと思います。関心を持つきっかけはありますか。いまの日本を、次の時代に渡していくことは、本当はしてはいけないと思う。こういう日本をもらっても困るだけです。何か言ってあげられることといったら……。
まずね、炊飯器を使わないでご飯をたける人になってごらんなさい。それからね、煮干しでダシをひいてごらん。それがどこまでやれるか、自分を試してみることだ。そして煮干しをから煎りしてかじるんだ。煮干しをかじれる人になれるかどうか。そう思わない?
とっても皮肉な提案だと思うけれど、自分を試してご覧なさい。私たちの持っているものは、煮干し以外ないんです。その煮干しを扱えなかったら、命は危ないな。朝日新聞デジタル>記事 (実業之日本社)
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